広報1月号

更新日:2023年01月11日

消えゆく正月の風物詩

門付け芸

江戸時代、寄席や見世物小屋だけでなく、町や村では様々な芸をする人々が家々を回っていました。獅子舞、万歳、皿回しなどはその代表的なものです。正月ともなると、全国各地至るところで行われていました。これらの芸は、門の前で行われることから『門付け芸』と呼ばれています。
獅子舞は、笛や太鼓とともに、にぎやかに正月気分を盛り上げた娯楽でした。元々は、信仰に基づくもので、神からの祝福を運ぶものと考えられていたと言います。
猿回しや獅子舞などは、前述したとおり、現在では正月の寄席や劇場・神社などで見ることができますが、家々を回る風習が残るのは、今では、ごく一部の地域だけになっています。昭和40年代頃までは、獅子に頭を噛んでもらうと厄払いになると言われ、正月になると、獅子を見て泣く子どもの声が家々から聞こえていたそうです。

物売り芸

一方、門付け芸に対して「ご用とお急ぎでない方は?」の『物売り芸』。これはいかに客を集め、気を引き、売るかを考えた物売りの芸です。南京玉簾は、簾売りの物売り芸だったものが、芸能として寄席や見世物小屋の芸に昇華したものです。
庶民は、木戸銭(見物料)を払わずとも、町を歩けばこうした娯楽をごく当たり前に楽しむことができました。これらの芸を演じていた人の多くは、被差別身分の人々でした。
室町時代に猿楽を舞台芸能の能楽として大成した観阿弥・世阿弥父子や銀閣寺の庭園を造った庭師善阿弥・小四郎・又四郎も、河原者と呼ばれた被差別身分の出身でした。
明治4年、政府が出した太政官布告、いわゆる『解放令』で、形の上では身分は廃止されましたが、それと同時に大阪などでは、門付け芸や物売り芸が禁止されました。このことも、門付け芸や物売り芸が見られなくなっていった原因なのかもしれません。一見、楽しそうな伝統芸もその背景には、それを支える人々の様々な暮らしや歴史があるのです。

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