町長室から(第5回)

更新日:2022年03月31日

花月川沿いで作業着姿の大勢の男性たちが集まっている様子

先月号に、今年の梅雨は雨が少ないと書きましたが、7月に入ったら大分県西部等では過去にないような大雨に見舞われることになりました。

特に日田市、そして福岡県の朝倉市では大きな被害を受け、また多くの方が亡くなられました。お見舞いを申し上げるとともに、心よりご冥福をお祈りいたします。

地域における防災の取り組みについて

7月5日午後、活発な前線の影響で、大分県を含む九州北部は記録的な大雨に見舞われました。午後7時55分には、数十年に一度の災害の危険性が高まったとして、県内で初めての『大雨特別警報』が発令されました。日田市では6日の午後9時までの24時間雨量は370ミリメートルに達し、観測史上最高を記録しました。今回の雨は、『線状降水帯』と呼ばれる帯状に連なった積乱雲がもたらしたものでした。

気象庁によると、この線状降水帯は、その形成やどこに流れるかは、わずかな地形や風向の違いに左右されるので、予測が難しいとのことです。

ということは、今回のような突発的な事態はいつどこで起きても不思議ではないということだと思います。

この災害から一週間ほど経った7月14日朝のNHKニュースで興味深い内容が報道されていました。

日田市の花月川流域にある吹上町自治会の防災の取り組みです。

5年前、吹上町自治会では、花月川の氾濫で住宅135棟が浸水するなどの被害が発生しましたが、このとき組織的な避難の呼びかけができなかったことを教訓に新しい防災マニュアルを作ったとのことです。

自治会長は、7月5日、マニュアルに基づいて自治会のメンバーを川に派遣し、消防団と一緒に行動するなど安全を確保しながら詳しい情報の収集をしました。その結果、JR久大線の鉄橋が流されたのに続き、鉄橋から50メートルほど上流にある堤防が幅50メートルにわたって崩れているとの報告を受けました。

自治会長は非常に危険な状態と判断し、『行政だけの情報に頼らず、自分たちが危険度を判断し、住民に避難を指示する』というマニュアルの指針に基づいて自治会として避難の呼びかけを始めたとのことです。自治会のメンバーが、高齢者などの住宅を訪問して避難を促しました。その結果、自宅に残っていた高齢者などを無事避難させることができ、けが人も出なかったとのことでした。

私は、このニュースを見て、『正常性バイアス』のことが頭に浮かびました。『正常性バイアス』については、日本気象協会の天気予報専門メディア(tenki.jp) に、次のような説明があります。『正常性バイアス』は、人間が予期しない事態に直面したとき、『ありえない』という先

入観や偏見(バイアス) が働き、物事を正常の範囲だと自動的に認識する心の働きのことです。何か起こるたびに反応していると精神的に疲れてしまうので、人間にはそのようなストレスを回避するために“脳”が自然に働き、心の平安を守る作用が備わっています。ただ、この防御作用ともいえる『正常性バイアス』が度を越すと、一刻も早くその場を立ち去らなければならない非常事態であるにもかかわらず、『正常性バイアス』によってその認識が妨げられ、命の危険にさらされる状況を招きかねません。

今回の豪雨時に、各家庭でそれぞれの住民が、自ら得た情報をもとに各自で状況を判断していると、『正常性バイアス』が強く働いた人は、『ありえない』、『自分は大丈夫』と考えて避難しなかったかもしれません。吹上町自治会は、収集した情報を基に自治会が独自に下した判断で住民に避難を呼びかけましたが、このことが『正常性バイアス』から地域住民を救うことができ

た面もあるのではないかと思った次第です。

吹上町自治会の勇気ある行動に敬意を表したいと思いますし、これからの日出町の防災計画に生かしていきたいと思います。

(注意)以上の内容は「広報ひじ」平成29年8月号に掲載されたものです。  

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