東日本大震災から10年 ~災害と人権について考える~

更新日:2022年03月31日

2011年(平成23年)3月11日に発生した東日本大震災では、東北地方を中心に関東地方や太平洋沿岸部を地震による津波が襲い、多くの方のかけがえのない生命や財産、大切な思い出、幸せな日常生活が奪い去られました。発生から10年が経過する現在も国、自治体、企業、住民が一体となって復興への取り組みが続けられています。
私たちは一人ひとりがこの震災の経験を風化させず、正しい知識と思いやりの心で、身近な体験として受けとめていくことが大切です。

この災害により、多くの方が避難生活を余儀なくされ、被災者に対する嫌がらせや福島第一原発事故に伴う風評被害に基づく偏見・差別も発生し、いまだにつらい思いをされている方々もいます。この大震災で生じた課題(人権侵害)の事例を一部ご紹介します。

避難所や仮設住宅での課題 -いろいろな人権問題が表面化-

災害時には、仮設トイレがすぐに避難所に届くとは限らず、トイレが不足することがありました。トイレが排泄物の山となり、劣悪な衛生状態となったところも数多く見られ到底使用できる状態ではありませんでした。また、和式トイレである、設置場所が暗い、段差がある等の問題により、高齢者、障がい者、女性、子ども等にとって使用しにくいものでした。このことから、トイレの回数を減らすために水分や食事を控えることとなり、心身の機能の低下や様々な疾患の発生・悪化が見られました。(避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン 平成28年4月内閣府)

避難所での生活や運営にあたっては、女性だからということで、避難所の炊き出しの仕事を割り振られ、食事の用意や片づけなどに追われ、その合間に、子どもの面倒や両親の介護などという固定的性別役割分担の実態がありました。
物資の備蓄や提供については、生理用品やおむつ、粉ミルクがないということや、生理用品や女性用の下着が届いても、男性が配布しているため、女性がもらいに行きづらい、女性用の物干し場がないので下着が干せないと状況がありました。
また、プライバシーが十分に確保されておらず、授乳や着替えをするための場所がなく、女性が布団の中で周りの目を気にしながら着替えるという事例も報告されています。(「共同参画」2011年 9月号 内閣府男女共同参画局)

女性や子どもに対する暴力や虐待も深刻で、10代未満から60代以上と広範囲の女性や子どもたちが、さまざまな場所で、DVや性暴力の被害を受けていたことが明らかになりました。(東日本大震災「災害・復興時における女性と子どもへの暴力」調査報告書 2013年 東日本大震災女性支援ネットワーク)

障がいのある方々や高齢の方々については、不慣れな環境で長期間過ごすことへの不安やストレスを抱え、孤立化するなど適切な支援や対応を受けられない状況もありました。
避難所だけでなく仮設住宅に入居できたとしても、設備がバリアフリーになっておらず段差で転倒したり、車いすでの出入りに困るなど困難な生活をしていました。(要援護者に配慮した東日本大震災時の避難所運営の実態に関する調査報告書 平成26年3月 復建調査設計株式会社)

原発事故による風評被害 -偏見、嫌悪からの差別-

福島第一原発事故により放出された放射性物質は、福島県をはじめ東日本の広範囲に拡散し被害をもたらしました。
平成23年4月21日法務省人権擁護局が、「放射能線被ばくについての風評被害に関する緊急メッセージ」を発表しています。新聞報道等によると、避難してこられた方々が、ホテルで宿泊を拒否されたり、ガソリンの給油を拒否されたりした事案や、小学生が避難先の小学校でいじめを受けるなどの事案もあったとされています。
これらは福島出身、福島ナンバーの車という理由だけで拒否されたり、遠ざけられたり、偏見の目で見られるということで起こった差別事象です。
また、県外に避難しても、福島から来たということを隠しながら生活せざるを得ない方々や、またその一方で、どこへも避難することができず、そのまま被災した家に住み続けている方々もいるのです。

その他、被災現場では、住民が避難したことによる留守宅への空き巣や休業中の商店・金融機関に侵入する店舗荒らしや自販機荒らし、倒壊した家屋から金品が盗まれるなどの犯罪被害も発生しています。

放射能・放射線・放射性物質について

文部科学省が作成した「中学生・高校生のための放射線副読本 ~放射線について考えよう~」の中で、次のように説明されています。

  •  放射線は宇宙から降り注いだり、大地、空気、そして食べ物からも出たりしています。
    また、私たちの家や学校などの建物からも出ています。目に見えていなくても、私たちは今も昔も放射線がある中で暮らしており、放射線を受ける量をゼロにすることはできません。
  • 放射線は、風邪のように人から人へうつることはありません。これは人が光を受けてもその人が光を出すわけはないのと同じです。
  •  放射線を出す物質を「放射性物質」といい、放射性物質が放射線を出す能力を「放射能」といいます。放射線を光に例えると、放射性物質は電球、放射能は光を出す能力に例えられます。
  • 人が放射線を受けても、放射線が体にとどまることはなく、放射線を受けたことが原因で人が放射線を出すようになることはありません。また、万一、服や体に放射性物質が付着してしまった場合でも、シャワーを浴びたり衣類を洗濯したりすれば洗い流すことができます。

放射能の影響を心配するあまり、根拠のない思い込みや偏見で差別することは人権侵害につながります。

私たちにできること

被災地から遠く離れ、メディアを通じてのみ情報を手に入れることしかできない私たちは、震災に対する実感や実体験がありません。被災者の声に真摯に耳を傾け、その思いを巡らすという「想像力」を持つとともに、メディアが「現実」を構成しているということを理解し、メディアからの情報を一方的に受け入れるのではなく、その情報を主体的に正しく読み解く力(メディ ア・リテラシー)を身につけていくことが大切です。
私たちもいつ災害に見舞われるかわかりません。県内でも地震、台風、豪雨、土砂崩れなどによる自然災害が発生しています。避難生活の中でも、女性や障がい者、高齢者、子どもたちをはじめ、すべての人たちの人権が守られ、安心して過ごしていけるよう、私たちは何ができるのか日頃から考えておく必要があります。

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